個人的に愛用しているサロモンのロードランニングシューズ「ファンタズム(¥16,500➩店頭割引中)」。昨年、春に発売されたモデルなので今さら感は無きにしも非ずですが、いいシューズなので改めて紹介したいと思います。
まず、わかりやすくするためサロモンのオリジナル素材名称を省きつつ各部位別に紹介します。
・インソール+中底+ミッドソール+プレート+ミッドソール+アウターソールというサンドイッチ構造で、特徴的なのは2つの硬さの違うミッドソールを採用しているところです。ボリューム感ある上側のミッドソールは柔らかく、下側のそれは薄く硬めです。
役割としては、上側のソフトなミッドソールでクッション性、下側の硬めなミッドソールは安定性とロッカーソールの転がり感の働きをしています。
・ミッドソール間に挟まるプレートは、ポリアミドとグラスファイバーを組み合わせたもの。プレート現物を手に取り見ましたが、硬質なものではなく、バネ感というよりは踏み込みの安定性と転がりやすさを狙った印象です。
・軽量化のためヒールカウンターを省いていますが、その代わりに点線部分を硬質にすることで足首が内側に倒れるオーバープロネーションしないようにサポートされています。片脚着地時に内くるぶし側に倒れると膝関節、股関節にも影響し、走る時の前進するランニングパワーに影響があります。ファンタズムに採用されているヒールカウンターを入れず軽量化しつつ、足のオーバープロネーションを抑える仕様は、なかなか良いアイディアだと思ます。
・踵の幅よりもソールのボリューム感があり、安定ミッドソールと相まって着地の安定性を演出しています。
・アッパーはアラミド繊維が含まれた素材「マトリックス」で、軽量性と通気性がよく、さらに伸縮性が少ない素材です。
ほどよいクッション性でタイミングが合わせやすく、軽量で転がる感覚で、アウターソールやヒールカウンターの省略からすると、ゆっくりジョグより少し速めのペースの走り方をターゲットにしたであろうという印象です。
そして、このファンタズムを語る上で避けられない点があります。
サロモンが開発したアッパー素材マトリックスは、少々癖があります。軽量で通気性がありヨレない点は魅力ですが、ストレッチ性がなく、シュータンが薄いのでシューレースの縛り方が難しく、場合によっては痛いと感じるかも知れません。
履き始め当初は「履き心地が硬いなー」と思い、硬さを逃がす手段としてストレッチコードの靴紐に変えて走ってもみましたが、感覚としてはイマイチよくなかったのでまたオリジナルの靴紐に戻して履き続けました。
硬いとは言え、しばらく使うと馴染みが出てくるので痛みはなくなり、今では良いトレーニング&レースのパートナーとなっています。
下に続く写真は約300km走った私のファンタズムの状態です。
見た感じでもひどい消耗感はないと思います。そこで、新品と比べてどれくらい消耗しているかを計測してみました。
<新品>重さ231g、スタックハイト:ヒール37mm/フォアフット28mm(内インソール厚4.5mm)
<300km走行後>重さ233g、スタックハイト:ヒール36mm/フォアフット27mm(内インソール厚4mm)
走行後2g重くなっているのは一度も洗ってないからかもしれません(苦笑)。それよりもミッドソールがヘタッていない、アウターソールが削れ過ぎていないことに注目です。最近のソフトなミッドソールはヘタリが早いのですが、ファンタズムがヘタリづらい理由は、着地時に硬めのミッドソールが一旦衝撃を受け、そして柔らかいミッドソールに伝えるからかと想像しています。
ちなみに履き方ですが、これはファンタズムに限らずアッパーに硬い素材のシューズは走っていると緩んでくることがあります。そういうシューズの履き方は、まずいつものように踵をトントンとフィットさせ、シューレース全体のゆるみを取った後、上の写真のようにシューレースを軽く引っ張りながら、着地するように路面にトントンと足裏をぶつけ衝撃を与えたり、前足部の曲がるところでクイクイッと爪先を曲げて、取り切れなかった緩みを取ってからシューレースを結ぶ履き方がおすすめです。
最初はとっつきにくい奴だなと思っても、しばらく話してみるとなかなかいい奴で、いつの間にか信頼できる良い友人になる。
ファンタズムは最初とっつきづらいかもしれませんが、しばらく走ってみると、いいパートナーになるそんなシューズです。