RUNARX RUNNING COMPANY / ルナークス・ランニング・カンパニー - 埼玉県川口市のランニング・スペシャリティショップ

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シューズ考 

今回は、HOKA ONE ONE(以下HOKA):CARBON X2(以下X2)¥25,000+taxについてです。
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以下は実測データ(計測サイズ8.0インチ)。

ソール厚:ヒール34mm/フォアフット25mm
ドロップ:9mm
インソール厚:2mm
他:中底あり
重さ:228g

これは、CARBON X(以下X1)とほぼ同じ数値です。
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そのX1のキックオフは、HOKAアスリートを集結させて100kmマラソンの世界記録を目指す「Project CARBON X」と共に全世界に発表され、そこでJim Walmsleyが50マイルの世界新記録を出すなど、インパクトを与えました。
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画像:RUNNERS PULSより
しかしインパクトがあったのは走行感で、HOKA史上最も前に転がりやすくさせたロッカーソールとカーボンプレートの組み合わせによって前傾や脚の回転がさせやすく、エリートだけではなく幅広いランナーが自転車のペダリングのようなランニング「ランニング ≒ ライディング」という感覚だったと思います。
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そして2021年1月にアップデートされたX2が発表されました。その鮮やかなフィエスタのカラーにホワイトのソールが映え、シンプルかつシャープなデザインは見た目からもスピーディなイメージが感じられます。
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ではX2はアップデートされた点を見ていきます。
●アッパー
1枚のメッシュアッパーで伸縮性はなく足との一体感があるという点はX1を踏襲しています。違うのは、X2のアッパーにはTPU(ウレタン樹脂)糸を折り込んだ素材にしたことでX1より締め付け感がないところです。
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●ヒール
硬質のヒールカウンターが入り着地時(片脚立位の状態)の安定性が増しました。またアキレス腱の擦れを無くしプルタブとしても使えるエルフ・イヤー(つけ耳)形状に変更されました。
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●ソール
新しく開発したソフトなフォームを採用しています。そして、X1はミッドソールとアウターソールの割合が65%:35%に対し、X2は80%:20%と新ミッドソールのボリュームを増量させました。このことからクッション性、ソフトな着地感を重要視していることが伺えます。
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アウターソールの底面積を広くすることで着地の安定を確保しているのは、X1と同じです。片脚立位でも不安定さが抑えることでチカラを伝えやすく、結果スピードがキープでき、マイルドな着地感も手伝って路面の凸凹があっても何もなかったように走りに集中できます。
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それから、CLIFTON EDGEにようなロングテール形状を採用し、疲労し踵側で着地しても前に押し出してくれるサポートが得られています。
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●カーボンプレート
X1同様にスプーン型ではなくウィッシュボーン型のカーボンプレートをインストールしています。ウィッシュボーンにすることで、走行時の足関節の動き(回外回内)をカーボンプレートの硬さが邪魔しないように考案されました。
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また、詳細は不明ですがX2のカーボンプレートはX1より明らかにしなりやすく、ROCKET Xに近い1mm相当の薄いカーボンプレートに変更したのではないかと思います。これによって欧米人より体型が小さい日本人でもカーボンプレートを曲げやすくなり、加えてカーボンプレートが路面に近い位置に変更されたことで、スプリング効果が得られるようになりました。
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●他
・シュータンに切り込みとリフレクターを採用。X1にはなかったリフレクターを付けたということは、24時間走や夜間トレーニングでの使用を考えたのでしょう。
・重さは200gを切るような軽さではありません。軽さだけ求めればまだできる余地がありますが、そうしなかったのは快適性を削って軽くしても速くならない結論に至ったのでしょう。

X2は「カーボンスーパーシューズ」というカテゴリーのランニングシューズですが、若干他社とX2は「速く走る」ためのアプローチが違う印象があります。実際に使用したところ、10kmロードレースでマックスに近い追い込みで走った時はタイミングが取りづらかったのですが、出力70%程度のテンポ走やそれ以下の30kmジョグでは、後半になっても脚に負担なく快適に走る事ができました。
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X2は、スウィートスポットで着地しチカラを加えるとパンと反発するカーボンスーパーシューズとはテイストが少し異なりマイルドな着地感が特徴ということから、他社のような高反発させて推進させるよりも体にストレスなくスムーズに走らせる方が負担が少なくペースを落とさず結果的に速いタイムが出ると導いたのでしょう。そんなマイルドな着地感から、X2は長距離を一定ペースで走るフルマラソンやウルトラマラソンのような走り方に使いやすいかと考えます。(それはキロ〇分向けやサブ〇向けという速度で考えるのではなく、履き手の出力パーセンテージもしくは心拍数ゾーンで考えるべき)

さらに個人的な感想を付け加えるなら「ベビーパウダーを敷き詰めた路面を走っている」というイメージがしました。着地した瞬間「バフッ」とベビーパウダーを踏みつける程度のマイルドな着地の後、路面の硬さが現れ、前にグンと押されるイメージ。それは「ソフトフォーム+ロッキングモーション+カーボンスプリング」のコンビネーションによるところか、と想像しています。特に平坦でそれは体感しやすく下りでは着地のたびに突き上げる衝撃もなくスムーズで、いたって快適でした。

逆に気になる点と注意点もお伝えしましょう。
*HOKAのシューズは全体的に多いのですが、シューレースが長いです。さらに欲を言えばカーボンプレートを活かすためにもシューレースはX1同様の非伸縮の方がありがたい
*X2に限った話しではありませんが、カーボンプレートが入ったシューズは入っていないシューズに比べて屈曲しづらいため、シューレースが緩むことがあります。しっかり踵をトントンと合わせて、緩まないように二重結びをするなどしっかり結びましょう。
アウターソールが柔らかいため減りやすいです。これはマイルドな着地感を優先したためでしょう。
*TPU糸の含んだアッパーによってX1よりは履きやすいはずですが、特にワイド設計ではありませんので足幅が広い方は圧迫感を感じるかもしれません。
*X1よりもX2はロッカーソール感が少ないですが、それでもロッカーポイントと母指球のあるボールポイントを嚙合わせることはシューズ性能を活かすためにも大切ですので、実際に前後サイズをフィッティングすることをお勧めします。

各社「厚底+カーボンプレート」というランニングシューズのニュータイプを世に送りだす戦いの中で、HOKAはX2という一手を打ちました。また、HOKAはX2の援護射撃として、再びJim Walmsleyや日本人選手などHOKAアスリートがX2で100kmの世界記録を目指す「Project CARBON X2」が開催される模様です(コロナの関係で延期や中止も)

尚、X2のインソールにはこのような言葉が添えられています。
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GO THE DISTANCE. GO THERE FAST.
CARBON X2というニュータイプは、あなたを覚醒させる一足になるかもしれません。
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