RUNARX RUNNING COMPANY / ルナークス・ランニング・カンパニー - 埼玉県川口市のランニング・スペシャリティショップ

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シューズ考 

 発売前にプロモーションとして100kmの世界記録を目指そうと企画された「プロジェクトクト・カーボンエックス」でお披露目され一気に注目されることとなったHOKA ONE ONE「カーボンエックス」。


 ホカオネオネの開発者がカーボンエックスを「今まで培ってきた技術の集大成」と語っていますが、確かにブラッシュアップさせた印象のシューズです。今回の盛り上がりで、大手ブランドしか知らなかったランナーの方も「ナニ?ホカワンワン?ホカオネオネ?」と知るきっかけになり、一躍ランニング・ブランドのヒノキ舞台に押し上げた感があります。今回はこの「カーボンエックス」を見ていきます。
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 まずは実測の基本データから(M’s26.5cm)
重量242g/ヒール厚32mm-フォアフット厚27mm=オフセット5mm(インソール厚2mm)
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次いで、基本情報。
アッパーは裏地がない1枚生地で軽量性を重視。柔らかさがあるものの、伸縮性に富んでいるわけではなく、加えて非伸縮のシューレースと2mm厚のインソールによって、シューズと足がぴったりフィット。足がブレず素早い動作でも問題なし。
前に転がるソール形状の「メタ・ロッカー・テクノロジー」を進化させ、他モデル以上の蹴りだしポイントが明確
2層にわかれたソール「プロフライエックス・テクノロジー」は、足に近い青い部分のミッドソールは柔らかく履き心地とクッション性を向上させ、地面に近い白い部分のソールはラバーを使用せず耐久性を上げることに成功。
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 カーボンエックスはホカオネオネ史上最も前の転がり感が現れている印象です。試しにカーボンエックスとホカオネオネ代表モデルクリフトンを片足づつ履いてみると、クリフトンがフラットに感じるくらいカーボンエックスの方が「カクッ」とした印象があります。それは、転がるというよりも内蔵カーボンプレートも相まって前方に「飛び放つ=Take Off」に近いです。
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 カーボンエックスに内蔵されたカーボンプレートは、形状、他の素材との組み合わせ(何かをミックスすることで柔軟性を出していると考えられる)などHOKA ONE ONEのオリジナル。注目は、写真に見る形状「ウィッシュボーンシェイプ」です。
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 カーボンの特長上、縦方向(上下)に曲げるとバネ感が得られますが、ねじれに対しては硬すぎて簡単ではありません。下の写真は一部で話題?のカーボンインソール($199.00USD)。縦方向はしなりますが、ねじれは硬くて厳しいです。
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 人の足は器具のようにシンプルな動きをするわけではなく、複雑な動きをします。確かにフォアフットで着地し続けられるエリート選手ならその恩恵もありますが、多くのランナーは足の外側(小指側)から着地をして、土踏まずのスプリングを活かした後、爪先方向に蹴りだすといった外→内→前のねじれながら走るのが一般的です。それを例えば、足裏全体にカーボン板を仕込んだ場合、その自然なねじれる動きを邪魔をする可能性が考えられます。

 そこでHOKA ONE ONEは、走りに大切なねじれ感を邪魔させないことに着目し、板ではなくウィッシュボーン型に、また違う素材を混ぜて柔軟性を上げることで、自然なねじれの動きは邪魔せず板バネを活かすカーボンプレートを開発したことがわかります。
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 この内蔵カーボンプレートで触れておかなければならないのが、どのブランドのカーボンプレート内蔵シューズにしても、力任せに体重をかけてソール=カーボンを曲げないでください。それはカーボン製の釣り竿、ラケット、ストックをイメージしたらわかりますが、製品が持つしなる許容量以上に力をかけるとカーボン繊維が破断してしまいます。
 「やい、のび太!お前にカーボンエックスなんて100年早いぞ。オレに貸してみろ!」と言われ、ガシガシ、ミシミシとソールを曲げてしまうとせっかくのバネ感がなくなり、役に立たないカーボン板が入っているだけのシューズになってしまいます。ぜひご注意ください。

 さて、今回のカーボンエックスは、ランニングに注力しているショップだけで販売されました。その理由としては「フィッティングが簡単ではない」と考えています。
 カーボンエックスは、カーボンプレートが入り(ソールが屈曲しづらい)、ヒールカウンターがない(踵のホールド感が得づらい)シューズです。
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 そのためイージーに履いてしまうと、間違いなく踵がパカパカと浮きます。カーボンエックスを履くときは、ランニングシューズの履き方の基本に忠実に足入れしたら踵をトントンとしてヒールと踵を隙間なくフィットさせた状態で、シューレースを足の甲にフィットさせながら結んでください

 さらにもう一つ「簡単ではない」のが、ロッカーソールとボールジョイントの位置です。
 ランニングシューズを選ぶ時に幅がきついから、いつもより1サイズ上げることがあります。しかし、そうしてカーボンエックスを選ぶとロッカーソールの凸の部分と母指球と小指球のライン「ボールジョイント」の理想位置が微妙にズレてしまい、走りづらくなることがあります。
 下手なイラストで申し訳ありませんが、ロッカーソールの凸より後ろにボールジョイントがズレると、下り坂の前に少し上り坂があるような感じになり、それは下る前に「よいしょっ」と余計な力をいれなければなりません。しかし、そのサイズのままロッカーソールの凸とボールジョイントを合わせて履くと、今度は踵がパカパカと。。という点からも販売店側の力量が問われるシューズでもあります。
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 それから、この蹴りだしポイントとボールジョイントを合わせる考え方は、カーボンエックスに限らずナイキ:ヴェイパーフライも同様です。時々、「ヴェイパーフライは合わない」がいらっしゃいますが、合わない理由の一つにこのことがあるかもしれません。

さらに補足情報として、

カーボンエックスはそれほど幅が広いシューズではなく、アッパーの伸縮性が少ないことから、「足幅が広い」という自認される方は、もしかしたらフィッティングが難しいかもしれません。
ラバーを貼らないアウターソールのため、ラバーを貼っているシューズよりは着地も蹴りだしもマイルド(ぼやける)なので違和感を持つ人もいると思います。(小川壮太選手のランニングレッスンでよく言う「蹴らない」走り方を身につけたら、そんな違和感はないでしょう)

 これは余談ですが、カーボンエックスに限らずロッカーソール形状のシューズに慣れない方は、
薄底やランニングサンダルなどでランニングのドリルのひとつ「トロッティング」を取り入れてみるのもおすすめです。(YouTubeで検索してみて)これをしつこくしつこく行い、着地意識、脚の切り返し、回転イメージ、腕(ひじ)振りとの連動などを体に染みこませた上で、ロッカーソール形状のシューズに履き替えて、再びトロッティングを行うと足を地面につけた反動だけで体が前に進むのが体感できるかもしれません。これが楽に体を前に進めてくれる「Take Off」感です。
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 難しい、難しいばかり言って使いこなせないかと思いきや、それは全く逆。カーボンエックスは優れたクッション性とスムーズな体重移動、軽量、足を前に進める推進力を備えたユーザーフレンドリーなランニングシューズ。「運転しやすいF1カー」とも言えます。

 ホカオネオネの名前の由来でもある「Time to Fry」。それにピッタリなTake Offのポイントを持つのがカーボンエックスの特徴です。機会があれば試してみてください。
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