今、試し履きシューズをご用意しているアシックス:ヌーサFFについて見ていきます。
このヌーサFFは、トライアスロンを想定しデザインされたランニングシューズで、全世界で統一モデルとして販売され、デザインが「アシックスらしくなくてカッコいい」と高評価?(苦笑)です。
今まではゲルヌーサとしてトライアスロンをターゲットに作られたシューズでしたが、過去のデザインを見ると超ド派手で「ん~~」と悩んでしまうものでしたが、2017年はスタイリッシュも仕様も一新されました。
まず、シューズの実測データから。
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メンズ26.0cm:重さ226g/ヒール厚32cm-フォアフット厚22mm=オフセット10mm
ウィメンズ23.5cm:重さ192g/ヒール厚30mm-フォアフット厚20mm=オフセット10mm
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この30~32mm厚のソールでこのM's226g/W's192gと軽量なシューズは数ありません。
厚めのソールのため、トライアスロンでもミドル~ロングに良いかもしれませんが、特に重いシューズというわけでもありませんので(後述しますが水抜けがいい分、レース時は通常のランシューズよりも軽量という考えもできます)10kmでの足の回転やピッチ、振りやすさにさほど影響がないかと思います。
そんなトライアスロンでの使用を意識したヌーサFFですが、①素足でも履ける、②水抜けの良さ、③履き替えやすい、④路面が濡れていても滑らない、⑤疲れた状態でランがスタートetcというポイントを意識しています。
①と②は、アッパーとベロがメッシュ構造の目が大きく、通気性や水抜けの良さの他に素足で足が当たったとしても擦れ感がなく柔らかく快適性を重視している仕様です。私自身、最初に足を入れた時は狭いと感じましたが(新品だったこともあり)、シームレスのメッシュ構造のため不快感はなく、すぐに馴染んで全く気にならなくなりました。
③については、ヒールとベロにシリコングリップが付いており、履き替えやすさを意識した仕様にしています。細かい仕様ですが、慌てている時ほどこういう親切がつまらないストレスを生まずに済んでくれます。
④については、前足部にアシックスが開発したウェットグリップラバースポンジを搭載しています。
⑤については新しいミッドソールFlyteFoam(フライトフォーム)とヒールカウンターが疲れづらさを抑える仕様にしています。
フライトフォームについて、アシックスではこう言っています。
「ランニングシューズの軽量性と優れたクッション性の両立。アシックスは、この課題を克服しました。アシックススポーツ工学研究所が300以上もの試作を繰り返し、約3年の歳月をかけて開発したのが、アシックス史上最軽量、かつクッション性 に最も優れたクッショニングシステムです。飛ぶような走り心地をお届けします。」
また、
「"軽量なミッドソールはもろく、安定性に欠ける"というこれまでの概念を覆し、軽量でありながらへたりにくく、持続的なクッショニングを発揮するこの素材は・・・」
新製品のためどれくらいの使用でへたり感が出るのかはまだわかりませんが、確かに「軽量性とクッション性は両立している」ことはどなたも感じられると思います。
ちなみにミッドソールのへたり、耐久性について参考になる写真をお客様からいただきました(Special Thanks Sugi-san)。これらの写真は、フライトフォーム仕様のアシックス:ダイナフライトを正式発売前に昨年夏にフランスで入手し、現在まで履いている方の写真です。
こちらが新品。
そしてこちらが現在。
わかりづらいですが、大きくミッドソールが潰れている感じは見受けられないので、耐久性についてはアシックスの言う通りかもしれません。
実際に履いて走ってみると、柔らかさはあるけど腰がないフニャッとしたタイミングの取りづらさはなく、クッション性と反発性(着地した力の反作用)のバランスがいい印象でした。
スイム、バイクを終えて疲労した状態からのランニングでは、体に負担をやわらげ後半失速させないソフトな着地感が欲しいですし、しかしレースとなるとストレスのない軽快な足さばきも欲しい。そんな選手の無理難題を現実にしたのがFlyteFoamのような気がしています。
最後にヒールカウンターですが、踵が着地時にぶれないようにする硬質でしっかり踵をホールドする構造で、これによって疲労すると起きやすい踵の内側への倒れ込み「オーバープロネーション」(過回内)を抑えてくれます。
逆にこのヒールカウンターが合いづらいと思われる人もいます。具体的には「甲の低い足の人、土踏まずが低い足の人」。グローバルモデルということで、欧米のハイアーチの足を想定しているのか、高さがあるヒールカウンターのため、甲が低い足の人はくるぶしが当たってしまう可能性があります。そのため、実際に履いて確認することは必要なシューズです。
(ちなみに、その場合は当たらない調整を少し加えてお渡ししますのでご安心を)
個人的に最初に履いて走った時の第一印象は、「えらく蹴りやすいな」といったバネ感覚のようなものがありました。着地感はソフトだけど、体がスッスッを前に出る感覚は予想外で、これはどこから感じるんだろうと何回も履いて確かめて、脱いで構造をチェックしてみました。いくつかの部分(ヒールカウンター、オフセット、屈曲性)が関連しあってそう感じさせていると思いますが、割合としては新しいミッドソールFlyteFoamの沈み込みが少なさと反発性のバランスが大きいと考えています。
ヌーサFFは、アシックスの優れた開発力とトライアスロンのレース仕様にしてくれたおかげで、快適性と軽量性が高次元でバランスが取れたランニングシューズが生まれました。
ヌーサFFのそれらの特徴は、トライアスロンに限らずとも(履きやすさを除いて)フルマラソン、ウルトラマラソンでも欲しい機能だと思います。後半の失速を抑えてくれるクッション性+反発性、軽量感、フィット感はランナーを目標に近づけてくれる武器になるでしょう。
デザインはアシックスらしくないかもしれませんが、その中身はアシックスらしい開発力が表現されたシューズです。ちょっと履いて走ってみたくなりませんか?またランナーを悩ませるシューズが登場してしまいました。
RUNARX RUNNING CO.